分子標的薬による皮膚障害への対応
ー発症させないことを目指した先行管理
監修・出演:清原 祥夫 先生(静岡がんセンター 皮膚科 参与)
※医師の所属・役職は動画公開時点のものです
コセルゴ®をはじめとした分子標的薬の副作用として、皮膚障害が知られています。本動画では、この皮膚障害の対応をテーマに、介入意義や実際の管理方法、患者さん・ご家族とのコミュニケーションのポイントについて、ご解説いただきました。
※下部に本動画のスライドと解説を載せています。ご参照ください。
再生バーのマークをクリックすると、各チャプターへ移動できます。
- 0:00~
- はじめに
- 0:54~
- コセルゴの作用機序と分子標的薬による皮膚障害
- 1:40~
- 皮膚障害が患者さんへ及ぼす影響
- 2:30~
- 診療目標と達成のためのポイント
- 3:46~
- ざ瘡様皮膚炎とは
- 5:04~
- ざ瘡様皮膚炎の管理
- 5:56~
- 患者さん・ご家族とのコミュニケーションのポイント
- 8:25~
- 終わりに
※PCでご覧の方は、クリックでスライドと解説を拡大できます
はじめに
みなさん、こんにちは。静岡がんセンター 皮膚科の清原祥夫です。
本日は、分子標的薬による皮膚障害への対応をテーマに、介入意義や実際の管理方法、患者さん・ご家族とのコミュニケーションのポイントについて解説したいと思います。
どのような治療薬を選択する際にも、有効性と安全性のバランスは重要です。
分子標的薬の安全性を高めるために、さまざまな領域でこれまで適切な副作用管理が検討されてきました。現在では、管理方法が確立し、広く治療が継続できるようになっています。
コセルゴの作用機序と分子標的薬による皮膚障害
分子標的薬の1つにコセルゴ®(以下、コセルゴ)があります。
コセルゴのターゲットは「MEK」です。MEKを阻害することで細胞増殖を抑制します。
分子標的薬には、このMAPK経路をはじめ細胞増殖につながるシグナル伝達経路をターゲットとした複数の治療薬が存在します。
こちらはその一部で、いずれも副作用として皮膚障害が挙げられます。
皮膚が細胞増殖の活発な部位であることを考えると、これらの細胞増殖抑制に関わる薬剤が皮膚障害につながることを理解しやすいのではないでしょうか。
皮膚障害が患者さんへ及ぼす影響
皮膚障害は外見の問題につながり、患者さんのQOL悪化に直結しやすいにもかかわらず、過去には緊急性や重症度が高くないと考えられてきたケースもありました。
しかし、医療の発展により病気とともに生きる時間が長期化し、患者さんの「精神的・社会的負担の軽減」や「QOLの維持・改善」の重要性と、これらが治療の中断・中止につながるリスクであることが改めて認識されてきました。
患者さんの安心・安定した日常生活だけでなく、治療を継続し効果を最大限に得るためにも皮膚障害への積極的な介入は不可欠なのです。
診療目標と達成のためのポイント
ここからは実際の管理方法について解説していきましょう。
分子標的薬使用時には、(1)皮膚障害を発症させないこと、(2)発症しても早い段階で見つけて重症化させないことの、大きく2つの目標があります。
発症させないためには、スキンケアによる予防が大切です。
私は保清、保湿、保護の「3保」について、スキンケアの大切さとあわせて、患者さんに必ずお伝えし、実践してもらえるようにしています。
次は、早期発見・早期対処についてです。
何よりも、いつ、どんな皮膚障害が起こりやすいのかを予め把握しておくことが重要だと考えます。
こちらはコセルゴの代表的な有害事象における非発現率のKaplan-Meier曲線です。ざ瘡様皮膚炎は投与開始後、比較的早期に、爪囲炎はざ瘡様皮膚炎に次いで発現する傾向があるため、それぞれこの時期には小まめにフォローアップするのがよいでしょう。
ざ瘡様皮膚炎とは
ここまでは皮膚障害の全般的な内容について解説してきましたが、ここからは各論としてざ瘡様皮膚炎に焦点を当てて解説していきます。
ざ瘡様皮膚炎は、「典型的には顔面、頭皮、胸部、背部に出現する紅色丘疹及び膿疱」と定義されています。脂漏部位の毛包に一致してみられ、炎症に伴うそう痒や疼痛が出現することもあります。
発症には、毛包の閉塞と炎症反応が重大な役割を果たすと推測されています。
詳しく述べると、分子標的薬投与により毛包上皮で不全角化等の角化異常が起こります。すると、角栓による開口部の閉塞が生じ、毛包内に皮脂が貯留します(微小面皰と言います)。これにより、炎症が引き起こされ、結果としてざ瘡様皮膚炎を発症すると考えられています。
よって普通のにきび(尋常性ざ瘡)とは異なり、アクネ桿菌が原因ではありません。この点に、注意が必要です。
ざ瘡様皮膚炎の管理
続いて、管理についてお話しします。
『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版』では、ざ瘡様皮膚炎の予防として、テトラサイクリン系抗菌薬の内服が推奨されています。
発症後は、自覚症状や皮疹の軽減を目的に、副腎皮質ステロイド外用剤等が勧められています。
また、医師、薬剤師、看護師から成る25名の専門職により実施された『皮膚科・腫瘍内科 有志コンセンサス会議』では、ざ瘡様皮膚炎の対応がまとめられ、治療薬だけでなく、日常生活の見直しやセルフケアについても言及されています。
患者さん・ご家族とのコミュニケーションのポイント
ここまで解説してきたように、皮膚障害の管理は、発症しやすい時期を予め把握し、予防から積極的にはじめることが重要です。
このためには医療関係者の介入だけでは不十分で、患者さんやご家族にも行動してもらう必要があります。
患者さん・ご家族への啓発として、第一にすることは、投与開始前に皮膚障害について説明すること、対応方法の存在を理解してもらうことです。
このことがセルフケアや治療継続のモチベーションアップにつながると感じています。
また、何事も具体的に伝え、デモンストレーションをすることもポイントです。
「保湿剤を塗ってください」ではなく、どれくらいの量を、どこに、どのタイミングでどのように塗ってほしいか、実際に見てもらいながら伝えることで、はじめて用法・用量を正しく理解してもらえると考えています。その場で一緒に実践してもらえると、さらによいでしょう。
これは、患者さんのアドヒアランスを上げることにもつながります。
例えば、説明の中で「朝・夜2回は無理」等の訴えが出てきたとします。そのような場合に、どうして1日2回が無理なのか確認し、落としどころを探ることで、患者さんが「できる」と思える状況を整えていくことができます。
ただし、忙しい診療の中で、このような対応を医師だけで行うことは現実的ではありません。また、患者さん・ご家族も1度に多くのことを言われても、覚えきれないでしょう。
こういうときこそ、チーム医療の出番です。場所を変え、人を変え、時を変え、何度もお伝えします。また、患者さんにはできなかった点を指摘するのではなく、一部でもできたことに共感し、褒めて奨励していきましょう。
このようなサポートも含め、医療関係者だけでなく、ご家族の存在が大きな支えになることは先生方もご存じのとおりかと思います。
終わりに
ここまで分子標的薬による皮膚障害の対応について解説いたしました。
分子標的薬の有害事象管理の知見は、すでに蓄積されています。私は、これらの情報を基に、目の前の患者さんにあわせ適宜調整することで、患者さんがさらに安心して治療を継続できるようになると考えています。
皮膚障害へ積極的に介入し、患者さんが長期に治療薬を継続できるよう、本動画が先生方の参考になれば幸いです。






















