監修者の所属は2025年5⽉時点の情報です

はじめに

神経線維腫症1型(NF1)は皮膚症状をはじめとして、さまざまな臓器に多様な症状を呈する疾患です。そのため、1つの診療科でNF1患者さんを診療することは難しく、多科連携が欠かせません。また、NF1は成長とともに新たな症状があらわれるため、定期受診が非常に重要です。特に、成人期のNF1は悪性腫瘍のリスクが高まることが知られており1)、定期受診を中断することは患者さんの予後に影響する可能性があります。しかし、実際には診療科毎に別々で診療するため一人の患者さんを総合的に診ることが難しく、また、小児科から成人を対象とした診療科への移行(トランジション)がうまくできない、定期受診の重要性を理解していない等の理由で定期受診をしなくなる患者さんもいらっしゃいます。
そこで今回は、神戸大学医学部附属病院でNF1-2 Boardを立ち上げられた久保亮治先生と、そのNF1-2 Boardにメンバーとして参加されている、兵庫県立こども病院の森貞直哉先生に、全年齢のNF1患者さんを継続して診療するための連携についてお話を伺いました。

  • 1)神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018

取材年月:2025年5月

神戸大学医学部附属病院の取り組み

NF1-2 Boardの立ち上げ

NF1-2 Board立ち上げ前の課題

神戸大学医学部附属病院では、基本的には主となる症状毎に、皮膚科や形成外科、整形外科等の診療科がそれぞれにNF1患者さんを診療しています。専門外の症状が発現したときには他科を紹介しますが、その紹介先は明確になっておらず、時に不便を感じていました。
また、NF1に関する最新知識の共有をより推し進めれば、NF1患者さんが持つさまざまなリスクを意識した、よりよい診療体制を築くことができるのではないか、とも感じていました。例えば、30代の女性のNF1患者さんでは、乳がんリスクが高い1,2)という情報を共有できていれば、患者さんに声かけをして定期的にマンモグラフィー等の検査を受けるように誘導し、早期発見につなげることができるはずです。NF1診療に関わるすべての医師が知識を共有するとともに、さまざまな臓器に生じる症状が的確に診療されるように計らう旗振り役を設定することで、一人の患者さんをトータルで診療することが必要だと考えていました。これらがNF1-2 Boardを立ち上げるきっかけとなりました。

  • 1)神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018
  • 2)Madanikia SA. et al.: Am J Med Genet A. 158A(12): 3056-3060, 2012
NF1-2 Boardの立ち上げと体制

NF1-2 Board立ち上げのもう1つの理由は、コセルゴの発売です。現在、遺伝性難病にさまざまな新薬が登場してきており、コセルゴに続く新薬も今後出てくるでしょう。そのような時代には、神戸大学附属病院に通院するNF1患者さんを病院全体として把握しておく必要性を感じました。また、患者さんの状態によっては、叢状神経線維腫(PN)の切除の可能性について形成外科医に意見を聞く必要がありますし、コセルゴの副作用が発現した場合には、副作用管理を他科の医師に依頼しなければならないケースもあります。このような多科連携がとれる体制構築も必要と考え、体制を整えることとなりました。
NF1-2 Boardの立ち上げは、先生方が快く協力してくださり、非常に順調でした。さまざまな科の先生方がそれぞれにNF1診療に苦慮されていて、このような体制構築が求められていたということかもしれません。参加メンバーは、普段から症例相談をしている医師を通じて各科の医師を紹介していただき、スムーズに揃いました。連携体制については、私が以前在籍していた慶應義塾大学病院の母斑症センターの体制も参考にさせていただきました。神戸大学附属病院には既にTSC(結節性硬化症) boardがあった一方、せっかく始めるのであれば今後新薬が出てくるであろうschwannomatosis(NF2)も網羅しておきたいと考え、NF1-2 boardと名付けました。2025年7月からは病院の公式な組織になる予定です。schwannomatosisの患者さんは少ないですが、NF1と同様、連携や情報共有が必要な疾患だと考えています。

実際のNF1-2 Boardの活動

NF1-2 Boardは、表1のような形式で開催しており、主には、NF1に関するレクチャーや情報共有、症例相談等を行っています。レクチャーは各科の持ち回りで、それぞれの専門に関するNF1の病態や重篤な症例等を紹介していただいています。第1回は整形外科から、NF1の側弯の特徴について講義していただきました。このような基本的な知識を共有しておくことで、他科との連携がよりスムーズになると思います。ガイドラインの改定や新薬の開発状況等の新しい情報の共有も重要です。直近の活動としては、院内でのWhole Body MRI(WBMRI)の運用プロトコールの作成と共有を行っています。

神戸大学医学部附属病院のNF1診療体制

小児と成人の患者さんを診るうえで中心となる診療科

当院では、NF1で初めて受診された患者さんは、小児は小児科、成人は主となる症状によって皮膚科や整形外科が受け入れます(図1)。成人の場合、症状によってさまざまな診療科を受診することになりますが、ほとんどの患者さんに皮膚症状があるため、皮膚科が院内の旗振り役を担うことも多いです。

Plexiform neurofibromaのスクリーニング

Plexiform neurofibroma (PN)は発生部位によってさまざまな障害の原因になり、また悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)に悪性転化する可能性もあります。外からは色素斑しかないように見えても、深部にブドウの房のような大きなPNがあるような患者さんもいます。見た目ではわからないPNのスクリーニングのためにWBMRIは重要だと考えており、頭部MRI(MRI angiographyを含む)とWBMRIを1度は実施するようにしています。小児科から成人科に移行した患者さんは、このタイミングでこれらの結果をもとに診療計画を作成しています。
しかし、WBMRIは撮像時間が長く、患者さんと病院の負担が大きいため、リスク・ベネフィットのバランスがとれた運用方法を検討する必要があります。そこで当院では、放射線診断・IVR科の医師と相談して、30分の枠内で撮影するプロトコールを作成しました。具体的には、WBMRIで全身をスクリーニングし、PNが疑われる部位を局所MRIで詳細に撮影するというフローです。30分のWBMRIのみで十分という誤解が生じないように、NF1-2 Boardでもしっかりと情報共有しています。

コセルゴの適応判断・管理

NF1-2 Board立ち上げのきっかけの1つであったコセルゴに関しては、その適応や管理で判断に迷うときにはNF1-2 Boardで相談していただき、さまざまな科の先生方の意見を伺った上で、最終的に主治医に判断していただければと考えています。

兵庫県立こども病院の取り組み

兵庫県立こども病院のNF1診療体制

院内のNF1診療体制

以前は、主な症状に合わせて、各科がそれぞれで診療し、外科系におかかりの患者さんには内科系の医師が関わることはほとんどありませんでした。総合診療科が発足した後は、一部の患者さんは総合診療科が中心となって診療していた時期もありましたが、現在は臨床遺伝科がその役割を担っています。外科系の医師から、発達や進路の悩み等の対応について臨床遺伝科に相談され、そのまま当科が中心となって情報をとりまとめていくことがよくあります。一方で、現在でもそれぞれの診療科だけで診ているケースがあり、診療科毎に異なるプロトコールで診療を行っていることは課題に感じています。今後、臨床遺伝科が旗振り役となって診療できる体制がさらに整っていくとよいと思っています。
初めてNF1で受診する患者さんは、臨床遺伝科で受け入れることが多いです(図2)。その後はまずは眼科の受診となるケースが多く、発達遅延があれば神経内科や精神科につなぎますし、成長に伴い背骨が曲がってきたら整形外科、重度の頭痛があれば脳神経外科へつなぎ、各診療科と相談しながらフォローしていくという体制です。
臨床遺伝科では、発達遅延の患者さんの親御さんからの相談や遺伝子検査、成人を対象とした診療科への移行等に対応しています。親御さんがインターネットで調べて、将来に不安を感じていることがあり、早い段階で進学や就職、結婚の可能性等、将来についても説明するようにしています。私は小児科医でもありますので、患者さんの成長を見ていく役割があると思っています。成長とともにあらわれる症状に対応しながら、親御さんとのつながりを維持し、安心感を与えることも大切にしています。

定期的な検査とWBMRIの適応

NF1は定期的に経過観察を行うことが重要ですが、各検査のタイミングは特に決めていません。当院の眼科はNF1のリスクに対する意識が高いため、10か月毎の定期受診が基本で、そのタイミングで臨床遺伝科も受診してもらうようにしています。その際には発達や血圧等の検査を実施していますが、気になることがあれば定期受診を待たずに遠慮なく受診するように親御さんに伝えています。
WBMRIもPNの早期発見のために重要だと考えていますが、患者さんが多いためすべての方に実施することは難しい状況です。気になる症状があれば積極的に撮影するようにはしていますが、小児は鎮静が必要になったり、長時間の検査に耐えられなかったりするため、患者さんを限定する必要があります。今後は、適応患者を検討し、プロトコールを作成して各科に共有していきたいと考えています。

コセルゴの適応判断と投与中の管理

当院では、コセルゴ投与は血液・腫瘍内科が管理することになっています。コセルゴの適応は腫瘍カンファレンスでコンセンサスを得る必要があり、カンファレンスでは、臨床遺伝科や血液・腫瘍内科、放射線診断科、脳神経外科等の医師が、それぞれの専門の視点で議論し、総合的に判断しています。
このように現在は、NF1診療において多科が集まって情報共有できるのは、コセルゴ適応の判断時のみですが、今後は神戸大学医学部附属病院のNF1-2 Boardのような体制を構築し、NF1診療全体の情報共有の場にしていきたいと考えています。

神戸大学医学部附属病院との連携とNF1-2 Boardへの参加

当院は小児専門病院であるため、患者さんが成人になるタイミングで転院する必要があります。以前は、それぞれの医師が神戸大学医学部附属病院の同じ診療科を紹介するというスタイルでした。その場合、当院には皮膚科がないため、皮膚科への紹介ができないという大きな課題がありました。また、院内の連携も不十分だと感じていて、神戸大学医学部附属病院の体制を参考にしたいという思いもありました。
そのような課題を抱えていたときに、神戸大学医学部附属病院でNF1-2 Boardが立ち上がったことを知り、神戸大学遺伝子診療部会議で面識があった久保先生に連絡させていただきました。NF1-2 Boardに参加させてほしいとお願いしたところご快諾いただき、私もメンバーとして参加できることになりました。課題となっていた皮膚科への紹介も久保先生とのつながりができたことで解決しました。先日も18歳になる直前の患者さんの臀部に腫瘍ができ、皮膚科を受診希望だったため久保先生に相談したところ、そのまま転院することができました。

連携のメリットと全年齢の継続診療のためにできること

NF1-2 Board 体制のメリット

NF1-2 Boardの体制が整ったことで、各診療科の医師との連携や兵庫県立こども病院から神戸大学医学部附属病院への転院がスムーズにできるようになり、NF1診療が効率的に進むようになりました(図3)。メンバーのメールアドレスがリスト化され、各診療科の窓口も明確化されましたし、会議で知識や情報を共有できるというのは大きなメリットだと思います。さまざまな診療科の専門医にすぐに相談し、回答が得られる体制があるというのは大変心強く、NF1に関して誰に相談してよいかわからなかった医師からも、相談先が明確になったと好評です。

これまでにNF1-2 Boardで情報共有/議論された具体的な例を挙げると、縦隔腫瘍により気管が狭窄してきた20代の患者さんの治療方針の相談や、兄弟みんながNF1である患者さんのトランジションの相談等がありました。NF2に関する相談もすでにあり、学校の健診で腹腔に大きな腫瘍があることを指摘されたティーンエージャーは、schwannomatosisの可能性が出てきてNF1-2 Boardへ紹介があり、予定されていたCT検査をキャンセルしMRI検査に切り替えられました。NF2患者さんにおけるCT検査のリスクについての明確な統計データはありませんが、放射線治療により二次的な発がんリスクが上昇するデータがあるため3-5)、放射線被ばくを避けることができたのはよかったと思います。
重篤な症例や判断に迷う症例を各診療科で抱え込むことなく、NF1-2 Boardのメンバー全員で議論できるのはとても有意義であり、適切な診断と診療方針の決定ができるという点で、患者さんのメリットも大きいと思います。最近ではNF1-2 Boardのメンバー以外からの相談も増えています。今後、病院のホームページにNF1-2 Boardについて掲載していく予定ですので、周知が進むとより多くの患者さんに適切な医療を提供していけるのではないでしょうか。

  • 3)Carlson ML. et al.: J Neurosurg 112(1): 81-87, 2010
  • 4)Balasubramaniam A. et al.: Neuro Oncol 9(4): 447-453, 2007
  • 5)Yao L. et al.: Cancers (Basel) 12(4): 835, 2020

全年齢の継続診療のためにしていること

NF1は先天性疾患であり根治は難しく、定期的に経過観察をして年齢に伴い変化する症状に対応していくことが重要です。生涯にわたり定期受診を継続していただくためには、患者さんの疾患理解もポイントになります(図4)。患者さんの中には症状で困っていないと、定期受診の必要性を感じない方もいます。その時点で自覚症状がなくても、NF1患者さんは乳がん等の悪性腫瘍や高血圧のリスクが高い1,6)こと等を伝え、定期受診の重要性を理解してもらうようにしています。発達障害や発達遅延がある方には、わかりやすいリスク、例えば目が見えなくなることがある、等の説明をしたり、普段から悩みを聞くようにしていたりすると、受診を継続してくださる方が多いです。
そもそもNF1に罹患していても診断されていない方が多くいらっしゃいます。子どもの受診に同伴してきた親御さんに発達遅延がありNF1に気づいていない、というケースも散見されます。このような場合、親御さんに受診を促しても、体を見せたくない等の理由で断られることも少なくありません。がん検診を勧めることもありますが、無理に促すと子どもの受診をやめてしまうリスクがあるため、様子を見ながら一度はWBMRIを撮影できればと思っています。

  • 1)神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018
  • 6)Niina Loponen. et al.: Mol Genet Genomic Med 12(1): e2346, 2024

最後に

今後、NF1診療の連携体制を整えていきたいと考えている先生方もいらっしゃると思います。その場合、総合病院であればまずはNF1診療の旗振り役となる診療科や医師を決めるとよいでしょう。例えば、小児であれば小児科が旗振り役となり、早い段階から皮膚科や整形外科と連携していくことをお勧めします。それにより成人への移行後はそのまま皮膚科で診療を継続することが可能になります。成人であれば、それぞれの医療機関の状況に応じて検討していただければと思います。もし我々のNF1-2 Boardを見学されたいというご要望があれば、お気軽にご連絡ください。

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