コセルゴ®における注意事項、異常がみられた場合の対処方法1)
本剤の投与により、眼障害があらわれる場合があるので、次の事項に注意してください。
- 本剤投与中は定期的に眼の異常の有無を確認してください。
- 既承認のMEK阻害剤において網膜剥離、網脈絡膜症、網膜静脈閉塞(RVO)、網膜色素上皮剥離(RPED)等の眼障害の発現が報告されています。
<異常がみられた場合の対処方法>
- 必要に応じて休薬、減量や投与中止等、適切な処置を行ってください。
- 眼の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導してください。
- 厚生労働省のホームページに重篤副作用疾患別対応マニュアル「網膜・視路障害」が掲載されていますのでご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/tp1122-1o.html(2024/02/09確認)
具体的な推奨:網膜色素上皮剥離、中心性漿液性網膜症
欧州の医師によるコンセンサスベースの推奨事項をご紹介いたします2)。
コンセンサス100%
将来の評価にむけてベースラインを確認するため、治療開始前に眼底検査や光干渉断層撮影(OCT)等の眼科的評価を行うべきである。
- 患者が視覚障害や症状(例:目を細める、霧視)を訴えた場合にも、評価を行うべきである。しかし、小児患者ではこのような障害の報告は困難な可能性があるため、可能であれば症状を報告するよう介護者に伝えるべきである。
- 非常に幼い患者では、協力が得られないため、OCTは実行できない可能性がある。
コンセンサス83%
視覚関連の有害事象はまれ*であるが、患者は3~6か月毎に眼底検査とOCTを含む眼科的評価を受けるべきである。低年齢の小児では、より頻回な評価が必要な場合もある。
- 眼科的評価は、通常治療開始時に頻回に実施され、その後のモニタリングは3~6か月毎に移行するのがよいと一部の専門家は指摘した。しかし、視神経膠腫を有する2人の小児を対象とした研究では、セルメチニブ治療開始6か月後と7か月後にそれぞれ網膜浮腫が発現したことが報告されており、セルメチニブ治療中に網膜の合併症が最も発現しやすい時期を決定するため、さらなる研究が重要であることが示唆されている。したがって、一部の患者では毎月のモニタリングが正当化されると心に留めておくことが重要である(6歳未満の小児、言語能力が不十分で視覚関連の有害事象についての症状を正確に報告できないリスクのある患者、既に眼底検査での異常や視力低下、悪化する視神経膠腫がある患者等)。
- 眼瞼、眼窩、眼窩周囲、顔面等にPNがある患者については、セルメチニブを使用しない場合でも視力低下のリスクがあるため、別途モニタリングすることが推奨される。
- 日本の電子添文では、眼障害である霧視の発生率が1~10%未満であることに注意
- 各薬剤や対処法の詳細は、それぞれの電子添文等をご参照ください。
- コセルゴ適正使用ガイド(2024年3月作成)p18
- Azizi AA. et al.: Neurooncol Pract 11(5): 515-531,
2024[COI:本研究は、アレクシオンファーマ合同会社の支援により実施され、編集助手はAlexion AstraZeneca
Rare
Diseaseより資金提供を受けている。著者の中には、アレクシオンファーマ合同会社及びアストラゼネカ株式会社の諮問委員会のメンバーや講演会の謝礼金、渡航費、研究助成費を受領している者が含まれる]
Azizi AA. et al., Consensus recommendations on management of selumetinib-associated adverse events in pediatric patients with neurofibromatosis type 1 and plexiform neurofibromas, Neurooncol Pract, 2024, 11(5), 515-531, by permission of Oxford University Press
眼障害発現時の用量調節基準1)
- GradeはCTCAE ver.4.03に準じる
眼障害のGrade分類(一部)
網膜色素上皮剥離のGrade分類(CTCAE v4.0 - JCOG[網膜剥離]より抜粋)2)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
症状がない | 滲出性で視力が0.5以上 | 裂孔原性又は滲出性の剥離;外科的処置を要する;視力の低下(0.5未満、0.1を超える) | 罹患眼の失明(0.1以下) |
網膜色素上皮剥離のGrade分類(CTCAE v5.0 - JCOG[網膜剥離]より抜粋)3)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
- | - | 黄斑部を除く裂孔原性網膜剥離 | 黄斑部剥離を伴う裂孔原性網膜剥離 |
中心性漿液性網膜症のGrade分類(CTCAE v4.0 - JCOG[網膜症]より抜粋)2)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
症状がない;臨床所見又は検査所見のみ | 症状があり、中等度の視力の低下を伴う(0.5以上);身の回り以外の日常生活動作の制限 | 症状があり、顕著な視力の低下を伴う(0.5未満);活動不能/動作不能;身の回りの日常生活動作の制限 | 罹患眼の失明(0.1以下) |
中心性漿液性網膜症のGrade分類(CTCAE v5.0 - JCOG[網膜症]より抜粋)3)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
症状がない;臨床所見又は検査所見のみ | 症状があり、中等度の視力の低下を伴う(最高矯正視力0.5以上又は既知のベースラインから3段階以下の視力低下);身の回り以外の日常生活動作の制限 | 症状があり、顕著な視力の低下を伴う(最高矯正視力0.5未満、0.1を超える、又は既知のベースラインから3段階を超える視力低下);身の回りの日常生活動作の制限 | 罹患眼の最高矯正視力0.1以下 |
眼障害、その他(具体的に記載)のGrade分類(CTCAE v4.0 - JCOGより抜粋)2)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
症状がない、又は軽度の症状がある;臨床所見又は検査所見のみ;治療を要さない | 中等症;最小限/局所的/非侵襲的治療を要する;年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限 | 重症又は医学的に重大であるが、ただちに生命を脅かすものではない;入院又は入院期間の延長を要する;活動不能/動作不能;身の回りの日常生活動作の制限 | 視覚喪失の可能性が高い状態;緊急処置を要する;罹患眼の失明(0.1以下) |
眼障害、その他(具体的に記載)のGrade分類(CTCAE v5.0 - JCOGより抜粋)3)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
症状がない、又は軽度の症状;臨床所見又は検査所見のみ;治療を要さない;視力に変化がない | 中等症;最小限/局所的/非侵襲的治療を要する;身の回り以外の日常生活動作の制限;最高矯正視力0.5以上又は既知のベースラインから3段階以下の視力低下 | 重症又は医学的に重大であるが、ただちに視覚喪失をきたす可能性は高くない;身の回りの日常生活動作の制限;視力低下(最高矯正視力0.5未満、0.1を超える、又は既知のベースラインから3段階を超える視力低下) | 視覚喪失の可能性が高い状態;緊急処置を要する;罹患眼の最高矯正視力0.1以下 |
霧視のGrade分類(CTCAE v4.0 - JCOGより抜粋)2)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
治療を要さない | 症状がある;身の回り以外の日常生活動作の制限 | 身の回りの日常生活動作の制限 | - |
霧視のGrade分類(CTCAE v5.0 - JCOGより抜粋) 3)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
---|---|---|---|
治療を要さない | 症状があり、中等度の視力の低下を伴う(最高矯正視力0.5以上又は既知のベースラインから3段階以下の視力低下);身の回り以外の日常生活動作の制限 | 症状があり、顕著な視力の低下を伴う(最高矯正視力0.5未満、0.1を超える、又は既知のベースラインから3段階を超える視力低下);身の回りの日常生活動作の制限 | 罹患眼の最高矯正視力0.1以下 |
- コセルゴ電子添文2023年12月改訂(第3版)
- JCOGホームページ: Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)Version 4.0, https://jcog.jp/assets/CTCAEv4J_20170912_v20_1.pdf, 2024/08/06確認
- JCOGホームページ: Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)Version 5.0, https://jcog.jp/assets/CTCAEv5J_20220901_v25_1.pdf, 2024/08/06確認
臨床試験での初回発現時期
海外第Ⅱ相試験における霧視の初回発現時期は図の通りでした(海外データ)1)。
臨床試験での発現状況(海外データを含む)2)3)
臨床試験での有害事象の発現状況(海外第Ⅱ相試験、国内第Ⅰ相試験、海外第Ⅰ相試験群と海外第Ⅱ相試験群の併合集団)
- 小児患者の併合集団において、74例中11例(14.9%)に霧視、9例(12.2%)に流涙増加、5例(6.8%)に眼痛が認められました。
- 国内第Ⅰ相試験において、12例中2例(16.7%)に眼窩周囲浮腫、1例(8.3%)にアレルギー性結膜炎が認められました。
- いずれの試験においても、重篤な有害事象、Grade3以上の有害事象、投与中止及び減量に至った有害事象は認められませんでした。
- 小児患者の併合集団において、休薬に至った有害事象は3例(4.1%)認められ、眼痛及び流涙増加が各1例(1.4%)(同一症例)、霧視が2例(2.7%)でした。このうち、霧視1例(1.4%)(Grade1)が本剤との関連ありと判断されました。
- いずれの試験においても、網膜静脈閉塞、中心性漿液性網膜症、網膜色素上皮剥離等の重篤な網膜症の発現は認められませんでした。また、網膜裂孔、霧視、流涙増加や眼痛等が報告されているものの、角膜障害の事象は認められませんでした。
- 成人患者の単独投与試験であるD1344C00001試験(全身療法を受けたことがない転移性ブドウ膜黒色腫患者に対する本剤+ダカルバジンの二重盲検投与後)において、本剤の投与を受けた1例で網膜静脈閉塞が1件報告されており、小児患者にとっても眼障害を引き起こす可能性は否定できず、重要な特定されたリスクとしました。
- D1532C00043試験(再発又は難治性の小児のLow Grade星細胞腫に対する本剤の第Ⅰ相薬物動態試験)で網膜事象が1件報告されました。
- Gradeは海外第Ⅰ相試験及び海外第Ⅱ相試験ではCTCAE ver.4.0に、国内第Ⅰ相試験ではCTCAE ver.5.0に準じる。
4. 効能又は効果
- 神経線維腫症1型における叢状神経線維腫腫
海外第Ⅰ相試験(SPRINT試験第Ⅰ相)の試験概要
- 【目的】
- NF1患者のPNに対するコセルゴ®の最大耐量、第Ⅱ相試験推奨用量、薬物動態、安全性、忍容性、及び有効性を検討すること
- 【対象】
- 組み入れ時に手術不能なPNを有する小児期のNF1患者24例
- 【方法】
- 標準的な3+3用量漸増デザインを用いて、コセルゴ®を3用量(20、25、30mg/m²[体表面積])について評価した。
コセルゴ®は1日2回(約12時間毎)を連日経口投与した。
- 【リミテーション】
- NF1患者に対して未検証のアウトカム指標が含まれている。
海外第Ⅱ相試験(SPRINT試験第Ⅱ相-1)の試験概要
- 【目的】
- NF1患者のPNに対する抗腫瘍効果及び臨床転帰から有効性を検討し、安全性についても検討すること
- 【対象】
- 組み入れ時にPN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期のNF1患者50例
- 【方法】
- コセルゴ®25mg/m²(体表面積)1日2回(約12時間毎)を連日経口投与し、コセルゴ®の有効性・安全性を評価する。
- 【リミテーション】
- NF1患者に対して未検証のアウトカム指標が含まれている。
国内第Ⅰ相試験(D1346C00013試験)の試験概要
- 【目的】
- PN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期の日本人NF1患者を対象にコセルゴ®の安全性、有効性、及び薬物動態について検討すること
- 【対象】
- PN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期の日本人NF1患者12例
- 【方法】
- コセルゴ® 25mg/m²(体表面積)1日2回(約12時間毎)を連日経口投与し、コセルゴ®の有効性・安全性を評価する。
- 【リミテーション】
- 患者数が少ないため、まれな有害事象の検出率が限られていた可能性がある。フォローアップ期間が短期である。
第Ⅰ相試験であり、有効性は予備的な評価である。
- コセルゴ安全性マネジメントポケットガイド(2023年11月作成)p29
- コセルゴ適正使用ガイド(2024年3月作成)p18
- 社内資料:注意を要する副作用とその対策(承認時評価資料)