心機能障害

コセルゴ®における注意事項、異常がみられた場合の対処方法1)

本剤の投与により、心機能障害があらわれる場合があるので、次の事項に注意してください。

  • 本剤投与開始前に、施設の基準値下限以上の駆出率を有していることを確認してください。
  • 本剤投与開始前及び投与中は定期的に心機能検査(心エコー等)を行い、患者の状態(左室駆出率の変動を含む)を確認してください。
  • 既承認のMEK阻害剤において、駆出力減少、左室機能不全、末梢性浮腫等の心機能障害関連事象が報告され、心不全等の重篤な心機能障害の発現も報告されています。

<異常がみられた場合の対処方法>

  • 必要に応じて休薬、減量や投与中止等、適切な処置を行ってください。
  • 症候性又はGrade3以上の駆出率減少を認めた場合は、投与を中止してください。

具体的な推奨

欧州の医師によるコンセンサスベースの推奨事項をご紹介いたします2)

コンセンサス100%

LVEF(左室駆出率)低下は自然に治ることが多いので、患者の年齢に対して妥当な範囲内にあり、無症候であれば、対処のためのアプローチは不要である(定期的な心エコー検査は除く)。

  • LVEF低下の妥当な範囲とは、患者の年齢におけるLLN(正常下限値)を超え、心エコー検査で他の機能的・解剖学的変化がなく、心拍出量低下の臨床症状がない場合と考えられる。
  • 症候性、又はGrade3、4のLVEF低下が認められた患者については、セルメチニブの投与を中止し、速やかに循環器内科を紹介すべきである。
コンセンサス100%

LVEF低下によりセルメチニブを中断した患者のうち、3か月以内にLVEFがLLN(地域の基準に基づく)に回復した者は、セルメチニブを減量して再開することができる。

  • セルメチニブを減量して再開する場合、1段階減量とすべきである。
  • セルメチニブを減量して再開することは、セルメチニブを含む臨床試験で提示された推奨と一致する。
コンセンサス83%

心臓関連の有害事象はまれであるが、約3か月ごとに心エコー検査でモニタリングすべきである。また、治療開始時にはより頻回にモニタリングすべきである。

  • この推奨は、他のMEK阻害剤に関する推奨と一致している。例えば、ダブラフェニブ**とトラメチニブ**は、治療前、治療1か月後、その後約3か月毎(及び用量変更後)に心エコー検査の実施が推奨されている。
  • 治療の進行にあわせて、モニタリング頻度を減らす(例:4~6か月毎)ことが適切な可能性がある。継続的なモニタリングは患者にとって大きな負担であり、実臨床や臨床試験における心臓関連の有害事象の頻度が低いことから、正当化されない可能性がある。医師の経験にもよるが、モニタリング頻度を減らすタイミングは3か月後の人もいれば、1~2年後の人もおり、非常にばらつきがある。
  • 日本の電子添文では、心機能障害である駆出率減少の発生率が14.5%であることに注意
  • 「神経線維腫症1型における叢状神経線維腫」に対しては本邦未承認
コンセンサス100%

他の心血管系のリスク因子がある患者では、より頻回な心エコー検査や3か月より短い間隔での定期的な診察によるモニタリングを考慮する。

  • 心血管系のリスク因子には、高血圧、先天性心疾患、高コレステロール血症、糖尿病が含まれる。
  • もしLVEF低下が起きた際に可能であれば、LVEF低下に関連するリスク因子を同定し、管理するため循環器専門医に相談してもよい。
  • 各薬剤や対処法の詳細は、それぞれの電子添文等をご参照ください。
  1. コセルゴ適正使用ガイド(2024年3月作成)p16
  2. Azizi AA. et al.: Neurooncol Pract 11(5): 515-531, 2024[COI:本研究は、アレクシオンファーマ合同会社の支援により実施され、編集助手はAlexion AstraZeneca Rare Diseaseより資金提供を受けている。著者の中には、アレクシオンファーマ合同会社及びアストラゼネカ株式会社の諮問委員会のメンバーや講演会の謝礼金、渡航費、研究助成費を受領している者が含まれる]
    Azizi AA. et al., Consensus recommendations on management of selumetinib-associated adverse events in pediatric patients with neurofibromatosis type 1 and plexiform neurofibromas, Neurooncol Pract, 2024, 11(5), 515-531, by permission of Oxford University Press

左室駆出率低下時の用量調節基準1)

  • GradeはCTCAE ver.4.03に準じる

左室駆出率低下のGrade分類

駆出率減少のGrade分類(CTCAE v4.0 - JCOGより抜粋)2)

Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
- 安静時駆出率(EF)が50–40%;ベースラインから10–20%低下 安静時駆出率(EF)が<40–20%;ベースラインから>20%低下 安静時駆出率(EF)<20%

駆出率減少のGrade分類(CTCAE v5.0 - JCOGより抜粋)3)

Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
- 安静時駆出率(EF)が50–40%;ベースラインから10–<20%低下 安静時駆出率(EF)が<40–20%;ベースラインから≧20%低下 安静時駆出率(EF)<20%
  1. コセルゴ電子添文2023年12月改訂(第3版)
  2. JCOGホームページ: Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)Version 4.0, https://jcog.jp/assets/CTCAEv4J_20170912_v20_1.pdf, 2024/08/06確認
  3. JCOGホームページ: Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)Version 5.0, https://jcog.jp/assets/CTCAEv5J_20220901_v25_1.pdf, 2024/08/06確認

臨床試験での初回発現時期

海外第Ⅱ相試験における駆出率減少の初回発現時期は図の通りでした(海外データ)1)

(データカットオフ1:2018年6月29日)

臨床試験での発現状況(海外データを含む)2)3)

臨床試験での有害事象の発現状況(海外第Ⅱ相試験、国内第Ⅰ相試験、海外第Ⅰ相試験群と海外第Ⅱ相試験群の併合集団)

  • 海外第Ⅱ相試験、国内第Ⅰ相試験、及び小児患者の併合集団において、本剤が投与された患者における駆出率減少の発現状況は以下の通りでした。
試験 全Grade
例(%)
Grade3以上
例(%)
海外第II相試験
50例
13 (26.0) 0 (0.0)
国内第I相試験
12例
2 (16.7) 0 (0.0)
小児患者の併合集団
(海外第Ⅰ相試験群+海外第II相試験群)74例
21 (28.4) 1 (1.4)

Gradeは海外第Ⅰ相試験及び海外第Ⅱ相試験ではCTCAE ver.4.0に、国内第Ⅰ相試験ではCTCAE ver.5.0に準じる。

  • 海外第Ⅱ相試験の13例(26.0%)で発現した駆出率減少では、2例(4.0%)でGrade2の駆出率減少がみられ、1例では治験責任医師が本剤投与に関連する可能性があるとしました。この2例では、休薬後、減量して投与を継続しました。
  • 小児患者の併合集団の21例(28.4%)で発現した駆出率減少はGrade2が20例(27.0%)、Grade3が1例(1.4%)で、Grade4以上のものは認められませんでした。いずれも無症候性であり、浮腫、呼吸困難、疲労等の心不全/心臓障害を示唆する症状は認められませんでした。転帰は17例(23.0%)が回復、4例(5.4%)が未回復又は不明であり、本剤との関連ありと判断された患者は15例(20.3%)でした。初回発現までの投与期間(中央値)は441.0日でした。
  • 国内第Ⅰ相試験の2例(16.7%)で発現した駆出率減少のうち、Grade3以上のものは認められませんでした。いずれも無症候性で、本剤との関連ありと判断され、投与中断後、本剤投与量を減量して投与を再開しました。
海外第Ⅰ相試験(SPRINT試験第Ⅰ相)の試験概要
【目的】
NF1患者のPNに対するコセルゴ®の最大耐量、第Ⅱ相試験推奨用量、薬物動態、安全性、忍容性、及び有効性を検討すること
【対象】
組み入れ時に手術不能なPNを有する小児期のNF1患者24例
【方法】
標準的な3+3用量漸増デザインを用いて、コセルゴ®を3用量(20、25、30mg/m²[体表面積])について評価した。
コセルゴ®は1日2回(約12時間毎)を連日経口投与した。
【リミテーション】
NF1患者に対して未検証のアウトカム指標が含まれている。
海外第Ⅱ相試験(SPRINT試験第Ⅱ相-1)の試験概要
【目的】
NF1患者のPNに対する抗腫瘍効果及び臨床転帰から有効性を検討し、安全性についても検討すること
【対象】
組み入れ時にPN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期のNF1患者50例
【方法】
コセルゴ®25mg/m²(体表面積)1日2回(約12時間毎)を連日経口投与し、コセルゴ®の有効性・安全性を評価する。
【リミテーション】
NF1患者に対して未検証のアウトカム指標が含まれている。
国内第Ⅰ相試験(D1346C00013試験)の試験概要
【目的】
PN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期の日本人NF1患者を対象にコセルゴ®の安全性、有効性、及び薬物動態について検討すること
【対象】
PN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期の日本人NF1患者12例
【方法】
コセルゴ® 25mg/m²(体表面積)1日2回(約12時間毎)を連日経口投与し、コセルゴ®の有効性・安全性を評価する。
【リミテーション】
患者数が少ないため、まれな有害事象の検出率が限られていた可能性がある。フォローアップ期間が短期である。
第Ⅰ相試験であり、有効性は予備的な評価である。
  1. コセルゴ安全性マネジメントポケットガイド(2023年11月作成)p26
  2. コセルゴ適正使用ガイド(2024年3月作成)p16
  3. 社内資料:注意を要する副作用とその対策(承認時評価資料)
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