横紋筋融解症・ミオパチー

コセルゴ®における注意事項、異常がみられた場合の対処方法1)

本剤の投与により、横紋筋融解症、ミオパチーがあらわれる場合があるので、次の事項に注意してください。

  • 本剤投与中は定期的にCK、クレアチニン等の検査を行い、筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等に十分注意してください。
  • 小児を対象とした臨床試験において、横紋筋融解症、ミオパチーは報告されていませんが、CKの増加が認められています。

<異常がみられた場合の対処方法>

  • 必要に応じて休薬、減量や投与中止等、適切な処置を行ってください。
  • Grade4のCK上昇を認めた場合は、専門医を受診するよう指導し、横紋筋融解症が認められた場合は、投与を中止してください。
  • 厚生労働省のホームページに重篤副作用疾患別対応マニュアル「横紋筋融解症」が掲載されていますのでご参照ください。
    https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/tp1122-1c.html(2024/02/09確認)

具体的な推奨

欧州の医師によるコンセンサスベースの推奨事項をご紹介いたします2)

コンセンサス100%

CPK(クレアチンホスホキナーゼ)上昇が認められた場合、医師は採血が安静時に行われたこと、及び筋肉の損傷や激しい運動と関係がないことを確認すべきである。

コンセンサス85%

医師はCPK上昇をモニタリングするため、治療開始時には1~3か月毎に血液検査を行うべきである。その後は、4~6か月毎の検査に移行すべきである。

コンセンサス100%

CPK上昇が正常上限値の5倍未満(すなわち、CTCAE Grade1又は2)で、患者が無症候の場合、セルメチニブを中止すべきではない。

CPK上昇の頻度は高いが、無症状であることが多い。患者への不必要な負担を避けるため、過剰なモニタリングは避けるべきである。

コンセンサス85%

患者が横紋筋融解症と診断された場合、セルメチニブを中止し、それ以降再開しないことが推奨される。

急速に進行する手術不能なPN患者もいるため、最終的な中止の判断は、リスクとベネフィットの分析に基づいて医師が行うべきである。

  • 各薬剤や対処法の詳細は、それぞれの電子添文等をご参照ください。
  1. コセルゴ適正使用ガイド(2024年3月作成)p26
  2. Azizi AA. et al.: Neurooncol Pract 11(5): 515-531, 2024[COI:本研究は、アレクシオンファーマ合同会社の支援により実施され、編集助手はAlexion AstraZeneca Rare Diseaseより資金提供を受けている。著者の中には、アレクシオンファーマ合同会社及びアストラゼネカ株式会社の諮問委員会のメンバーや講演会の謝礼金、渡航費、研究助成費を受領している者が含まれる]
    Azizi AA. et al., Consensus recommendations on management of selumetinib-associated adverse events in pediatric patients with neurofibromatosis type 1 and plexiform neurofibromas, Neurooncol Pract, 2024, 11(5), 515-531, by permission of Oxford University Press

筋障害時の用量調節基準1)

  • GradeはCTCAE ver.4.03に準じる

筋障害のGrade分類(一部)

筋肉痛のGrade分類(CTCAE v4.0 - JCOGより抜粋)2)

Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
軽度の疼痛 中等度の疼痛;身の回り以外の日常生活動作の制限 高度の疼痛;身の回りの日常生活動作の制限 -

筋肉痛のGrade分類(CTCAE v5.0 - JCOGより抜粋)3)

Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
軽度の疼痛 中等度の疼痛;身の回り以外の日常生活動作の制限 高度の疼痛;身の回りの日常生活動作の制限 -

CK上昇のGrade分類(CTCAE v4.0 - JCOGより抜粋)2)

Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
>ULN-2.5×ULN >2.5×ULN-5×ULN >5×ULN-10×ULN >10×ULN

CK上昇のGrade分類(CTCAE v5.0 - JCOGより抜粋)3)

Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
>ULN-2.5×ULN >2.5×ULN-5×ULN >5×ULN-10×ULN >10×ULN
  1. コセルゴ電子添文2023年12月改訂(第3版)
  2. JCOGホームページ: Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)Version 4.0, https://jcog.jp/assets/CTCAEv4J_20170912_v20_1.pdf, 2024/08/06確認
  3. JCOGホームページ: Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)Version 5.0, https://jcog.jp/assets/CTCAEv5J_20220901_v25_1.pdf, 2024/08/06確認

臨床試験での初回発現時期

海外第Ⅱ相試験における血中CK上昇の初回発現時期は図の通りでした(海外データ)1)

(データカットオフ1:2018年6月29日)

臨床試験での発現状況(海外データを含む)2)3)

臨床試験での有害事象の発現状況(海外第Ⅱ相試験、国内第Ⅰ相試験、海外第Ⅰ相試験群と海外第Ⅱ相試験群の併合集団)

  • 海外第Ⅱ相試験、国内第Ⅰ相試験、及び小児患者の併合集団において、本剤が投与された患者における筋肉痛、CK上昇の発現状況は以下の通りでした。
試験 全Grade
例(%)
Grade3以上
例(%)
筋肉痛 CK上昇 筋肉痛 CK上昇
海外第Ⅱ相試験
50例
2
(4.0)
39
(78.0)
0
(0.0)
3
(6.0)
国内第Ⅰ相試験
12例
1
(8.3)
1
(8.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
小児患者の併合集団
(海外第Ⅰ相試験群+海外第Ⅱ相試験群)74例
8
(10.8)
57
(77.0)
0
(0.0)
7
(9.5)

Gradeは海外第Ⅰ相試験及び海外第Ⅱ相試験ではCTCAE ver.4.0に、国内第Ⅰ相試験ではCTCAE ver.5.0に準じる。

  • 小児患者の併合集団において、Grade3以上の血中CK増加が7例(9.5%)に認められ、減量・休薬に至った有害事象はほとんどが血中CK増加でした。投与中止に至った有害事象は、急性腎障害・血中クレアチニン増加及び筋肉痛各1例でした。なお、CK増加の大部分は、減量又は支持療法のいずれも必要とせず、本剤投与中に回復しました。
  • 小児患者の併合集団において、筋骨格痛、筋力低下又は筋肉痛を発現した12例中1例が休薬、12例中1例が投与中止に至りましたが、全例が回復しました。
海外第Ⅰ相試験(SPRINT試験第Ⅰ相)の試験概要
【目的】
NF1患者のPNに対するコセルゴ®の最大耐量、第Ⅱ相試験推奨用量、薬物動態、安全性、忍容性、及び有効性を検討すること
【対象】
組み入れ時に手術不能なPNを有する小児期のNF1患者24例
【方法】
標準的な3+3用量漸増デザインを用いて、コセルゴ®を3用量(20、25、30mg/m²[体表面積])について評価した。
コセルゴ®は1日2回(約12時間毎)を連日経口投与した。
【リミテーション】
NF1患者に対して未検証のアウトカム指標が含まれている。
海外第Ⅱ相試験(SPRINT試験第Ⅱ相-1)の試験概要
【目的】
NF1患者のPNに対する抗腫瘍効果及び臨床転帰から有効性を検討し、安全性についても検討すること
【対象】
組み入れ時にPN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期のNF1患者50例
【方法】
コセルゴ®25mg/m²(体表面積)1日2回(約12時間毎)を連日経口投与し、コセルゴ®の有効性・安全性を評価する。
【リミテーション】
NF1患者に対して未検証のアウトカム指標が含まれている。
国内第Ⅰ相試験(D1346C00013試験)の試験概要
【目的】
PN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期の日本人NF1患者を対象にコセルゴ®の安全性、有効性、及び薬物動態について検討すること
【対象】
PN関連の病的状態を伴い、手術不能なPNを有する小児期の日本人NF1患者12例
【方法】
コセルゴ® 25mg/m²(体表面積)1日2回(約12時間毎)を連日経口投与し、コセルゴ®の有効性・安全性を評価する。
【リミテーション】
患者数が少ないため、まれな有害事象の検出率が限られていた可能性がある。フォローアップ期間が短期である。
第Ⅰ相試験であり、有効性は予備的な評価である。
  1. コセルゴ安全性マネジメントポケットガイド(2023年11月作成)p37
  2. コセルゴ適正使用ガイド(2024年3月作成)p26
  3. 社内資料:注意を要する副作用とその対策(承認時評価資料)
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