症例から考える​
コセルゴ®の適正患者

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監修:松尾 宗明 先生(佐賀大学医学部 小児科 教授)

※医師の所属・役職は動画公開時点のものです​

佐賀大学の松尾先生にご監修いただき、叢状神経線維腫やコセルゴ®適正患者、実際のコセルゴ®投与症例、医療費助成制度について解説しています。

※下部に本動画のスライドと解説を載せています。ご参照ください。​

動画構成​

再生バーのマークをクリックすると、各チャプターへ移動できます。

0:07~
叢状神経線維腫の診療のポイント・導入​
1:05~
叢状神経線維腫とは(神経線維腫の分類)
2:03~
コセルゴ®の適正患者
2:24~
実際の叢状神経線維腫の症例
5:17~
コセルゴ®処方時に利用できる可能性がある医療費助成制度
6:55~
終わりに​

※PCでご覧の方は、クリックでスライドと解説を拡大できます​

叢状神経線維腫の診療のポイント・導入

叢状神経線維腫は、症候性の場合、合併症により患者さんのQOLを低下させるため、早期の治療が求められます。​
また、治療がより困難な悪性末梢神経鞘腫瘍を発症するリスクもあるため、無症状でも注意深い経過観察が必要です。

治療に関しては、新しい選択肢として、「神経線維腫症1型における叢状神経線維腫」を対象とした経口治療薬であるコセルゴ®が登場しました。

ここでは、この3つに関してご説明いたします。

叢状神経線維腫とは(神経線維腫の分類)​

神経線維腫症1型の症状のひとつである神経線維腫は、皮膚の神経線維腫と叢状神経線維腫に大きく分けられます。
また、叢状神経線維腫には、神経の神経線維腫とびまん性神経線維腫が含まれます。

叢状神経線維腫の治療法は、今までは手術しか選択肢がありませんでした。しかし、出血や神経損傷のリスク等があるため、手術で完全に切除することは困難です。​
そのような中、コセルゴ®が新たな治療選択肢のひとつとして使用可能となりました。​

コセルゴ®の適正患者​

コセルゴ®の対象は、症状があり、手術で完全に切除できない叢状神経線維腫を有する3~18歳の神経線維腫症1型患者さんです。

実際の叢状神経線維腫の症例

具体的にどのような患者さんがコセルゴ®の投与対象となるのか、実際の症例をみてみましょう。

患者さんは、17歳女性です。​
1歳のときに風邪で他院を受診し、神経線維腫症1型の疑いがあると診断されました。しかし、転居などがあり、受診後のフォローは受けていませんでした。

3歳のときに当院を受診した際は、数ミリから15mm程度のカフェ・オ・レ斑が体幹に多数散在し、眼科で虹彩小結節と診断されたため、日本皮膚科学会の『神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)診療ガイドライン2018』1)の臨床的診断基準をもとに、神経線維腫症1型と診断されました。

1)日本皮膚科学会 神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会:神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)診療ガイドライン2018[日皮会誌128(1):17-34,2018]​

確定診断後は、1年に1回、身体診察、眼科診察、発達評価を行いながらフォローアップを実施していました。
そのような中、10歳から左上眼瞼に腫れが出ることがありました。

12歳のときに、「左目の腫れがひどく、続いている」と訴えがありました。
MRI検査を実施したところ、眼瞼部に軟部腫瘍を認めたため、形成外科にコンサルトしました。​

形成外科では、出血しやすい箇所でもあり摘出が困難であると判断されました。一時的であれば表面上に対して手術を行うことができることを患者さんに伝え、患者さんが希望されたので、手術を施行しました。​

しかし、高校生の17歳のときに実施したMRI検査で、腫瘍の増大が認められました。

そのときのMRI画像がこちらで、手術前の12歳時の画像と比較しています。左眼瞼と眼窩内の叢状神経線維腫が、術前よりも少し増大していることがおわかりいただけるかと思います。

この症例は、他科の先生とも相談した結果、再度の腫瘍減量手術は可能である一方、根治的な完全切除手術は困難であると判断しました。

また、「症状があり、手術で完全に切除できない叢状神経線維腫を有する3~18歳の神経線維腫症1型患者さん」に該当するため、コセルゴ®の投与対象になると判断しました。

完全切除不能の判断は、外科の先生や地域で神経線維腫症1型の診療をしている先生にぜひご相談ください。

コセルゴ®処方時に利用できる可能性がある医療費助成制度​

コセルゴ®の処方を検討する際は、患者さんの医療費負担の軽減のため、医療費助成制度を利用できるかどうかも考慮する必要があります。​
例えば、神経線維腫症1型は、指定難病医療費助成制度の対象疾患のひとつになっています。

具体的には、重症度分類でStage3以上に該当する場合に助成が受けられます。

重症度は、皮膚病変(D)、神経症状(N)、骨病変(B)の3症状に基づきStage1~5に分類されます。各症状は、数字が小さいほど軽く、大きいほど重くなります。

本症例は、D4の「びまん性神経線維腫などによる機能障害や著しい身体的苦痛又は悪性末梢神経鞘腫瘍の併発あり」に該当するため、Stage5に分類され、指定難病医療費助成制度を利用することができる可能性があります。

また、他の制度として、小児慢性特定疾病医療費助成制度があります。​
こちらは、特定の疾病をもつ18歳未満(条件を満たせば20歳未満)の患者さんを対象とした制度です。
神経線維腫症1型もこの制度の対象疾患です。

具体的には、これらの一定以上の症状を持つ方が対象となります。

終わりに​

神経線維腫症1型における叢状神経線維腫の診療においては、定期的なフォローアップや、他科との連携が重要です。​
また、今までは手術しか治療の選択肢がありませんでしたが、現在では経口治療薬であるコセルゴ®も選択肢になります。​​
本コンテンツの内容が、先生方の日々の診療の参考になれば幸いです。​

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