叢状神経線維腫を判断するためのヒント​
–⽪膚の神経線維腫と叢状神経線維腫の特徴–​

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監修・出演:吉田 雄一 先生(鳥取大学医学部 感覚運動医学講座 皮膚科学分野 教授)​

※医師の所属・役職は動画公開時点のものです​

コセルゴ®が使⽤可能となり、これまで以上に叢状神経線維腫を判断する機会が増えてくると思われます。そこで、今回は「叢状神経線維腫を判断するためのヒント」をテーマに、各神経線維腫の特徴について、⿃取⼤学の吉⽥雄⼀先⽣にご解説いただきました。​

※下部に本動画のスライドと解説を載せています。ご参照ください。​

動画構成​

再生バーのマークをクリックすると、各チャプターへ移動できます。

0:06~
はじめに​
0:52~
神経線維腫の分類​
1:35~
皮膚の神経線維腫​
2:37~
叢状神経線維腫:神経の神経線維腫​
3:47~
叢状神経線維腫:びまん性神経線維腫​
4:48~
判断に迷う症例
5:53~
コセルゴ®の適応症
6:17~
終わりに​

※PCでご覧の方は、クリックでスライドと解説を拡大できます​

はじめに​

皆さん、こんにちは。鳥取大学の吉田雄一です。​​
2022年11月より、「神経線維腫症1型における叢状神経線維腫」の治療薬であるコセルゴ®が本邦で発売され、臨床への導入が開始されています。​
本動画では、叢状神経線維腫を判断するためのヒントについてお話しします。

神経線維腫の分類​

神経線維腫は、皮膚の神経線維腫と叢状神経線維腫に大きくわけられ、叢状神経線維腫には、神経の神経線維腫とびまん性神経線維腫が含まれます。​まれに単発の神経の神経線維腫がみられることがありますが、概ね皮膚の神経線維腫以外を叢状神経線維腫と捉えて差し支えないと言えます。​

皮膚の神経線維腫​

皮膚の神経線維腫には、こちらに示すようなタイプがあることが知られています。​
一見すると腫瘍が表面からはわかりにくいものから、隆起してポリープ状になっているものなど、その大きさはさまざまです。​

本邦の『神経線維腫症1型診療ガイドライン』では、皮膚の神経線維腫について「常色あるいは淡紅色の弾性軟の腫瘍であり、思春期頃より全身に多発する」と記載されています。​
皮膚の神経線維腫は個人差が大きく、1人の患者さんにおいても、さまざまな形状の神経線維腫がみられます。

叢状神経線維腫:神経の神経線維腫​

神経の神経線維腫について、ガイドラインでは「皮下の神経に沿って紡錘形に硬く触れ、圧痛、放散痛を伴うことが多い」と記載されています。​
写真にて典型例をお示しします。​
左、中央の写真では、神経に沿った皮下の腫瘍を外観からでも確認可能です。​

一方、右の写真のように体表からは確認できない深部に存在することもあり、MRIなどによって初めて明らかとなる場合もあるため、注意が必要です。​
単発の腫瘍で根治切除可能であれば、コセルゴ®の適応外となりますが、多くの場合、腫瘍は多発し数珠状に連なり、切除が難しいのが実状です。​
また、悪性末梢神経鞘腫瘍の可能性についても念頭においておく必要があります。​

叢状神経線維腫:びまん性神経線維腫​

ガイドラインでは「徐々に増大し、弁状に下垂する」、大型の褐色斑にびまん性神経線維腫を生じることが多いなどと記載されています。​
左、中央の写真は典型例で、境界が不明瞭で大きな腫瘍が弁状に下垂しており、患者さんのQOLを著しく低下させる原因となることがおわかりいただけると思います。

また、現時点で腫瘍が認められなくても、右の写真のように大型の褐色斑がある場合は、その場所に徐々に腫瘍を生じる場合が多いので、注意深いフォローアップが必要となります。​

判断に迷う症例​

ここまで、神経線維腫の典型例を中心にご紹介させていただきました。​​
しかしながら実臨床では、典型例と異なり判断に迷う症例もございます。​

こちらは叢状神経線維腫です。皮膚の神経線維腫よりサイズが大きく、色素斑のある箇所に発生し、内側から盛り上がっています。​
このように判断が難しい場合には、日本レックリングハウゼン病学会のホームページに診療ネットワークの一覧が掲載されておりますので、神経線維腫症1型を専門のひとつとする施設へのご紹介をご検討ください。​

コセルゴ®の適応症​

最後に、コセルゴ®の適応症について確認したいと思います。​
「症状があり、手術で完全に切除できない叢状神経線維腫」がコセルゴ®の対象であり、叢状神経線維腫を鑑別した後は、こちらに示す情報を参考に、導入をご検討ください。​

終わりに​

コセルゴ®が使用可能となったことで、これまで以上に叢状神経線維腫を判断する機会が増えるかと思います。​
そこで今回は、「叢状神経線維腫を判断するためのヒント」をテーマとして、各神経線維腫の特徴を中心に解説させていただきました。​​
先生方の日々の診療において、本動画がお役に立てば幸いです。​

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